喫茶みずのみば|新潟市西区内野町

新潟市西区内野町の民家の中にある小さな喫茶店です。

価格を見直しました

タイトル通り、メニューの価格を見直しました。ほとんどのドリンクメニューを値上げさせていただきました。トーストメニューとモーニングは変更ありません。

原材料費の高騰も理由の一つではあるのですが、もっと別な理由があって今回価格を改定させていただきました。今年8月1日にオープンして以来ずっと、ブレンドコーヒーは300円で提供してきましたのですが、約5ヶ月間お客さんから「安すぎる」という言葉をもう何度も聞きました。まだみずのみばに来たことがない(またはコーヒーを注文したことがない)方に説明しておくと、コーヒーはサイフォンで一杯ずつ丁寧にお淹れしています。「300円だから、サーバーに淹れておいたコーヒーを温めて出してくれる感じなのかな」と思われた方もいるようでした。確かに今の時代で、サイフォンで一杯ずつ淹れたコーヒーを300円で提供しているお店なんて「ありえない」と言われるレベルなのかもしれません。

そもそもみずのみばを始めた当初、ブレンドコーヒーをどうして300円に設定したのかというと、”コーヒー豆の分しか”考えていなかったからです。私はお店をやることに関してはまったくの初心者です。にもかかわらず、人にろくに相談もせずお店を作り、メニューの価格もすべて自分で決めました。コーヒー一杯あたりに使う豆は15グラム、約90円(オープン当時の値段です、今はもう少し上がりました)。原価率3割ってよく聞くから、90円÷0.3=300円だな、と。当たり前のことですが、豆だけではコーヒーを淹れることはできません。お湯、お湯を沸かすための電気、サイフォンの道具(フィルターやアルコールランプなどの消耗品含む)なども必要です。なのに私はコーヒー豆以外のすべてを無視して300円、と設定してしまったわけです。いやほんと、アホだなあと笑っていただきたいくらいなのですが…。

あともう一つ、無視していた要素があります。「場所代」です。私からすっぽり抜けていた概念。店主である私の一番重要な仕事は「みずのみばという場を提供すること」です。みずのみばが好きで通ってくださっている方は分かってくださっていると思いますが、みずのみばは「美味しい飲食物を提供すること」に重きを置いていません。もちろん、美味しく作るようにいつも心がけてはいますが。それがお店をやっている目的には結びつきません。私はこの世の中に”喫茶店のような”場所(喫茶店でなくてもよい)は必要だと強く思っています。みずのみばを約5ヶ月やってきた実感として「みずのみばはこの世の中に必要だ」と確信しています。今はそう思えます。しかしオープンするまでは確信がありませんでした。なんせお店をやるのは初めてで、果たしてお客さんが来てくださるのかも未知数だったので。「みずのみばはこの世の中に必要だ」と私に確信させてくれたのは、もちろん来てくださるお客さん皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。

みずのみばは本業としてやっているわけではありません。本業がお休みの日にやっています。副業といえばまあそうなんだけど、あんまり”仕事”とは思っていません。好きでやっていることなので”趣味”に限りなく近いのですが、100%”趣味”ですとは言い切れないなと思います。先述した「みずのみばはこの世の中に必要だ」というのは社会的意義とも言えそうです。なので私はある程度の”使命感”をもってみずのみばをやっています。使命感というと堅苦しい感じもありますが、私自身みずのみばが好きだし、いつもいつも楽しくやっています。言わずもがな、メニューの価格というのは、お店の構成要素の大きな部分であり大事なことです。みずのみばを長く続けていきたいという意味でも、この大事なことを改めて見直すことにしました。

いつものごとく長い文章になってしまいました。簡潔にまとめると、今回のメニュー価格の見直しは主に、みずのみばという場所代を頂戴する目的で行いました。コーヒーに限らずほとんどのドリンクを値上げし、今の時点で私が考える適正な価格に見直させていただきました。来てくださる皆様には、日々いろいろと変更してしまい申し訳ありません。今後ともよろしくお願いいたします。

【日報】2024年12月7日(土)

雪のち曇りときどき雨、6度。新潟市で初雪を観測。

この日は朝9時にオープンしてから7時間お客さんが誰も来ず。16時過ぎにやっとお一人いらっしゃいました。初雪による影響でしょうか。新潟市はあまり雪が積もる地域ではないものの、「雪は脅威」という意識は多かれ少なかれ、新潟県民誰しもが抱いている気がします。お客さんを待っている間、ただ一人、日報を書きながら静かに過ごしておりました。この日は11月30日の分の日報を執筆(←たぶん今までの記事で一番面白いです。必読!)。みずのみばの席レイアウトを変更したことについて書いています。変更した経緯、具体的にどのように変更したのか、飲食店分析、みずのみばではなぜお客さん同士での会話が生まれやすいのか等々、図解も入れながら論理的に書きました。もしかしたら不思議に思われるかもしれませんが、文章を書き進めるうちに、私の中でのみずのみばへの理解度がどんどん深まっていく感覚がありました。自分のお店ではあるけれども、分からない部分、見えていない部分ってきっとたくさんあります。普段ただお店をやっているだけではなかなか思い至ることができないな、とも思います。お店にお客さんがいる間は、お店のオペレーションやお客さんとのコミュニケーションに意識を集中させているゆえに。だからお店をやっていない時間、あるいはお客さんが誰もいない時間は、じっくりと思考するチャンスです。7時間どなたもお客さんがいらっしゃらなかったからこそ、新たな発見と良い文章が生まれました。繰り返しになりますが、みなさんぜひ11月30日の日報読んでくださいね^_^

さて、話は戻って12月7日のお客さんは、16時過ぎにいらした方お一人だけでした。「小さなお店に入ると、かなりの高確率で自分しかお客がいない」という現象が起こりがちな人って一定数いる気がします。私もけっこうそうだし、この方もそう。いらっしゃったのは、私が「みずのみばはなぜお客さん同士の会話が発生しやすいか」という文章を一所懸命書いた直後でした。不思議なものです。店主と絶対サシになる星の元に生まれてきたのかもしれません。なんのこっちゃね。

【日報】2024年12月5日(木)

雨ときどき晴れ、くもり、10度。

目の前のビル、笹川ビルの解体が12月4日に終わった。9月下旬から工事が始まって2ヶ月半くらいか。あっという間だったなあ。みずのみばの窓から工事風景を眺めるの、けっこう楽しかった。なんとなくうら悲しい気分になる。3階建てのビルはみずのみばにとって大きな目印になってくれていたので、無くなった途端に一瞬場所を見失うお客さんがちらほら。見晴らしは良くなったものの、場所の分かりづらさはあまり変わらないかも。

午前中にモーニングを召し上がって、お昼頃に一時外出、その後再びお戻りになった方。みずのみばは基本10時間(朝9時~夜7時)オープンしていますので、一日に何度出入りしても勿論OK。遠慮せず、何度でも。今のところあまり混み合うことはありませんので。………と思っていたら、夕方は来店が重なり最大風速5人(内訳:2人、1人、1人、1人の計4組)!みずのみばには椅子が7脚ありますが、テーブルの数は3つ。いずれも直径60cmほどの小さいサイズ。基本1組につき1つのテーブルを使っていただいているので、お客さんが4組以上来たらテーブルが足りなくなります。過去4ヶ月の営業では最多で3組だったので、なんとか上手く回せていたのですが。今日は4組。相席をお願いすることに。初対面のお客さん同士にもかかわらず、快く応えてくださって大変助かりました。ありがとうございます。

待ち合わせで、バラバラに入ってこられた二人組。お二人とも初来店だったのですが、まあまあ分かりづらい場所で、尚且つまあまあ入りづらい当喫茶店を現地集合にされるとは。私の想像以上に、みずのみばは世間からちゃんと「お店」として認知されてるという証なのかしら。ありがたいです。「喫茶店で待ち合わせ」という行為も個人的に好きなのでとても嬉しいです。待ち合わせが無事に果たされるためには、その場所が確実に存在していなければいけない。いつかは無くなってしまうかもしれないけれど、それまではこのみずのみばという場所を大切に大切に守りたいと思っています。

茶店は人々の日常にとって近いものでしょうか。遠いものでしょうか。毎日喫茶店に行く人もいれば、普段まったく行かない人もいますね。私の場合は、ずっと昔から喫茶店が好きだったわけではありません。3年ほど前、とあるバーの店主に「私は朝型である」という話をした時に「それなら、喫茶店に行くのがおすすめですよ」と言われたことをきっかけに、喫茶店に行くようになりました(ちなみに補足しておくと、そのバーの店主は喫茶店をこよなく愛する人です)。それから喫茶店の魅力にどっぷりハマり、W喫茶ワーク(店主は週4日は別の喫茶店で働き、週2~3日みずのみばをやっています)をして、ほぼ毎日を喫茶店で過ごすという現在の生活に至ります。バーの店主の一言をきっかけに、人生が大きく動いたなと実感します。私もお店に立っている身として、自分の言葉や行動がお客さんに大小さまざまな影響を与えうるということをやはり意識します。その影響というものが、なるべく前向きで豊かであるように。でも慎重になりすぎず。難しいですが、常に考えることをやめずに続けていけば、この世の中が少しずつ良くなっていくはずと信じて。精進します。

【日報】2024年12月3日(火)

雨、12度。

オープンしてから7時間、お客なし。お掃除したり、本を並べ替えたり、ぼーっとしたり。じつは1日(日)に衝撃的なニュース(!)を聞かされてから、心がざわざわと落ち着かない日々。どんなニュースかは、ぜひお店に来て尋ねてください。この日以降に来たお客さんにはお話してます。まだはっきりとしたことが分からないのでブログやSNSには書きません。

16時半くらいにやっと一人目のお客さんが。すぐそばでやっている工事の音の影響で、お客さんが入ってこられた時の音に気がつけないことが最近はよくあります。玄関を開けた音に気づかず、みずのみばの部屋の戸を開けられて声を掛けられた時にやっと気づくという。申し訳ないです。

このあともう2人増えて19時まで。この日は19時からお隣の毎日元日アイロニー演芸場にて「女医会」という月に一度の落語会の日。みなさん、ハシゴするために夕方の遅い時間にみずのみばに来てくださったようでした。ありがとうございます。

前回の営業、11月30日にレイアウト変更をしました(詳しくは前回の記事を参照!)。30日に新レイアウトでやってみた感想は個人的にいろいろあるのですが、「自分に注目が集まりすぎて緊張する」というのが一つありました。営業中、カウンター(腰くらいの高さ、幅50cmくらい)の内側がこれまでの私の基本的な立ち位置でした。しかし新しいレイアウトでいつもの立ち位置に立つと、なんだか落ち着かないのです。新しいレイアウトは擬似カウンターのような席なので、お客さんの体の向きも基本的にこちら(店主)側を向いています。そんな状況で私が喋ったり何らかのアクションを起こしたりすると、お客さんの目線は一斉にこちらに集まります。あるお客さんは「ナイチンゲールさん(←店主のこと)の舞台みたいですね」とおっしゃいました。まさにそう。大げさに表現すると、舞台に立つ役者になった気分。目線だけ向けられるよりも、目線と体、両方を向けられると一気に「舞台度」が上がります。映画やコンサートを観に行く時、体を横向きに、目線だけをスクリーンないしステージに向けることはないですよね。体と目線、どちらも向けるはず。それとおんなじ。舞台度が上がった結果、昔L字型のバーに立っていた時の緊張感を思い出しました。当時「このカウンターの中は舞台だ」という意識で、立ち振る舞いを常に考えながら動いていました。しかし、みずのみばのカウンター内に舞台っぽさが必要かどうかを考えると、答えは「常に必要ではない」。サイフォンでコーヒーを淹れる時は舞台だと思ってやっておりますが(かっこいいので!)、それ以外の場面では舞台っぽさはあまり必要ない。舞台っぽさの何が問題かというと、先述した「自分に注目が集まりすぎて緊張する」こと。つまり私が緊張しすぎてしまうのです。お店にいる間、店主もお客さんもある程度の緊張感は必要だと思いますが、緊張のしすぎはあまり良くない。相手の緊張ってなんとなく伝わってきます。特にみずのみばは小さな空間ですから、私の緊張もお客さんに伝わってしまいます。緊張感があまりにも充満すると、飲み物を飲んで一息つくという、喫茶店としての重要な機能が働かなくなってしまうのです。だから店主たる私は、堂々としながらもほどよく力の抜けた状態でいることが望ましいです。

そこで私の緊張を緩和すべく、30日の模様替えからまたさらに微調整を加えました(微調整の話をしたかっただけなのに前置きが長くなってしまいました)。細かいことを省略して簡単に言うと、自分が座る用の椅子を置きました。これまで営業中はずっと立っていたのですが、今後は基本的に座ることにしようかなと。座るとお客さんと目線の高さがほぼ同じになり、なんとなく対等なイメージに近づきます。高いところから低いところに言葉を放つと、なんだか学校の先生っぽくて対等な感じがありません。対等でないと感じながらのコミュニケーションは緊張感が生まれやすいと個人的には思います。また私の椅子の前に茶色いテーブルを置き、テーブルの上には本や雑貨をたくさん並べました。物を置くことで、私とお客さんとの間にちょっとした壁を作ったのです。これがあるのとないのとでは雲泥の差。目線を逃がす時にとても有効です、お互いに。やったことは本当に些細なことなのですが、明らかに「良くなったな」と思っております。初めての方も、そうでない方もぜひ”今”のみずのみばを体感してほしいなと思います。お待ちしております。

【日報】2024年11月30日(土)

くもり時々晴れ、雨、10度。

午前中はお客なし。毎日元日の店主と一緒にみずのみばでぼんやりと過ごしていました。本を読んだり、楽器(トランペットとカリンバ)を練習したり、外の工事風景を眺めたり。また、みずのみばの模様替えを行いました。今までのレイアウトはこう。↓

 店主   出入口

カウンター  ◯◁

▷⚫️◁   ◯◁

三角は椅子、丸はテーブル。

変更後↓

 店主   出入口

カウンター

 ◯  ◯  ⚫️◁

 △  △  △

このように変更した目的は、コミュニケーションの円滑化。みずのみばを4ヶ月やってみて分かったのは、「お客さん同士で会話が発生しやすい」ということ。しかし以前までの席配置だと、例えば一番左端と一番右端に座った人たちは物理的距離が遠く話しづらい。また、⚫️◁この人と、その真後ろの位置にあたる◯◁この人が会話する場合、前に座っている人が体を180度回転させなければいけない。お客さん同士が会話しづらい席配置になってしまっていたのです。ただそもそもの前提として、喫茶店というお店のジャンルにおいては、お客さん同士の会話は必ずしも発生するものではないし、むしろレアな現象でしょう。何十年もやっているような個人経営の古い小さな喫茶店で、常連のおじいさんおばあさんがいつもおしゃべりしているというシーンはありますが。飲食店の中でも喫茶店やレストラン、食堂、居酒屋なんかは、一般的に各テーブルは独立した配置にしていることがほとんど。席が独立しているので基本的には、他のテーブルのお客さんとのコミュニケーションは発生しません。当たり前のことです。お店を「海」と例えるならば、それぞれのテーブルは「島」。しかし島と島をつなぐ橋は架かっていないから原則行き来することはできません。

逆にコミュニケーションが発生することを前提とした席配置は、二種類あると思います。一つは「カウンター形式」。バーやスナックに多いです。カウンターの形状(I字、L字、コの字等)によりコミュニケーションの発生しやすさは変化します。もう一つは大テーブルを囲うように複数の椅子が置いてある形(仮に「大テーブル形式」とします)。みんなが一つの大きな「島」の中にいる。ゲストハウスの共用リビングなんかに見られるでしょうか(私はあまり宿泊経験が無いのであくまでもイメージです)。みずのみばの隣のお店、「毎日元日」という食堂もこれに近いです。「大テーブル形式」は「カウンター形式」よりもさらに、一つの場をみんなで共有するという意識がはたらきやすいと思います。どちらの形式にも共通して言えるのは、店主やお客さん同士の顔がお互いに見えることがコミュニケーションの発生のしやすさにつながっているということ。

お店の中でのコミュニケーションの発生のしやすさは席の配置で大きく変わります。逆に、席の配置というのはお店の雰囲気や方向性を大きく左右する極めて重要な鍵とも言えます。だからこそ、今回の模様替えはかなり慎重に行ったつもりです。「気分転換に模様替えしちゃお~ふふふ~ん♪」というノリでは決してないのです(いったい誰への弁明なんだ)。

さて、ここで一度、みずのみばという喫茶店はなぜお客さん同士での会話が発生しやすいのかを考えてみます。おさらいすると、今までのみずのみばの席配置はそれぞれが独立した配置でした。なのになぜ会話が発生するのか。考えられる理由の一つとしては、お店の広さでしょうか。みずのみばの広さは六畳。かなり小さな空間です。この程度の広さだと、少し体の角度を変えれば他のお客さんの顔は見えるし、全員の話し声はどこの席にいてもよく聞こえます。場にいる全員が、この場(みずのみば)を共有しているという意識がはたらきやすいのかもしれません。とすると、みずのみばという一つの空間が、ある意味一つのテーブルになっているとも言えそう。すなわち「大テーブル形式」に近いということ。席こそ独立はしているものの、みずのみばにおいては全員に場の共有意識がはたらいている。おそらくこれが主な理由なのでしょう。

先述したとおり「コミュニケーションの円滑化」をねらって模様替えをしました。お客さんの座る位置がほぼ横一直線になるように椅子とテーブルを配置。お客さん同士の顔が見えやすいように。そしてテーブルを挟んだ向かい側には店主の私がいます。擬似カウンターですね。模様替えをした直後、早速お客さんがやってきました。「みずのみばの雰囲気に合っている」というお言葉。また別のお客さん同士は、ある作品についての感想や考察を互いに交わし合っていました。元々用意してきた言葉ではなく、今この場で考えて生まれる言葉。良い時間が生まれたと思います。席配置を変えたことによる効用でしょう。今までの席配置だったら、これほどの良い時間は生まれなかったはず。非常に豊かでありました。

【日報】2024年11月29日(金)

雨、9度。大雨警報、雷注意報、強風注意報、波浪注意報。

前日、28日から新潟は天気が荒れている。この悪天候は30日まで続くようだ。このような天気の時、一般的に客足は遠のきます。8月1日にオープンして以来、一人もお客さんがおいでにならなかったのは8月31日(土)の一回だけ。確かこの日は台風が来ていたような。現在11月29日(金)の11時50分。午前中はお客なし。午後どうなるか。私は天気の悪い日ほど出かけてみれば、なにか面白いことが起こるんじゃないかと思ってしまう質です。みんなが出不精になるような日にわざわざ出かけていき、小さなお店に入るような人はちょっと面白い人あるいは素敵な人に見えてしまう。実際、そういう時に小さなお店に行くと面白く豊かな時間が生まれたりします。もちろん必ずそうなるとは限らない。私のような店師(店を愛し、店について深く考える人)はこういうのにギャンブル性を感じるので、お店に入るという行為は非常に面白く、やみつきになるのです。

ここからは12月6日(金)に執筆しています。誰もいないみずのみばにて。29日はあれだけ警報、注意報が出ていましたが、西区内野町は日中ほとんど曇り、晴れ間の見える時間もありました。予報に怯えてばかりいてはいけませんね。

行かなければいけない場所に行くことを諦めて、みずのみばに来ることにした人。そんな時に行く場所としてみずのみばを選んでもらえて嬉しいです。私自身、辛く苦しい時は、逃げ込むかのように喫茶店やバーに入ることがしばしばあります。「あの時、あのお店が開いていたから救われた」という確かな実感もあります。私は過去、間違いなくお店によって救われて、だからこそ自分でもお店をやりたい、場をつくりたいと強く思うのです。”必要”だと思っている人に、みずのみばというこの場所が届いて、使ってもらえることに私は大きな喜びを感じます。ありがとうございます。

お客さんから一枚の絵をいただきました。ご本人曰く「みずのみばのファンアートです」。ミルクピッチャー(コーヒーや紅茶と一緒につける小さなミルクの容器)の中で、人魚がのんびりと休んでいる絵。この絵で描かれているミルクピッチャーとはつまり、みずのみばのこと。みずのみばの中では安心して寛ぐことができる。人魚も、一緒にいる魚たちも美しいです。とても素敵な絵です。インスタグラムやXにも写真を載せましたが、みずのみばに飾っていますのでぜひ実物を近くで見てくださいね。

お客さんと一対一になった時にしか生まれない会話があります。もし他のお客さんが居合わせていたら、きっとこの話は出てこなかったんじゃないか。ここ(みずのみば)でだから、相手が私だから、話してくださったのではなかろうか。なんにせよ、聞かせていただいてとても嬉しかったです。ありがとうございます。

【日報】2024年11月26日(火)/「みずのみば」(歌)

くもりのち雨、16度。

11月19日(火)の日報に書いた「みずのみば」という歌を作ってくださった森田花壇さんが、ギターと録音機材(!)を持って来店。そう、みずのみばで録音をしたのです。曲を作ってくださった時に「サビの部分を歌っていただけると、もっと良くなります」「では、ぜひ歌わせてください」というやりとりをしました。なので「今日はみずのみばの歌を録音する日だ…!」と朝から緊張気味でした。自分の歌声を録音するなんて人生初だったもので。ちょうど他にお客さんもいなかったので、軽く数回練習してすぐ録音。また、ラスサビ前の部分の歌詞を、当初の歌詞から変更。一緒に考えて作りました。私がポツリと出したワードを森田花壇さんが華麗に繋げてくださり、良い詩になりました。ぜひ聴いてみてください。

https://www.instagram.com/reel/DC1R0ZMvaJL/?igsh=czlrdWI0aTJjcXFr

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「みずのみば」 森田花壇さん・かなみ

みずのみばというお店を知っていますか
西区内野町の路地の奥のほう
民家の中にポチャンと垂れたきれいな雫のような茶店
公園でたまに見かけていたけどこんなとこにもあったんだ

みずのみでもいい みずのみば行こう
みずのみ行こう みずのみば行こう
みずのみでもいい みずのみば行こう
みずのみ行こう みずのみば行こう

みずのみばというお店を知っていますか
演芸場の隣でコーヒーが飲めるのよ
ガリガリ豆を削る音が今日もかすかに聞こえるよ
ボコボコサイフォン沸かす音が明日の空の色になる

みずのみでもいい みずのみば行こう
みずのみ行こう みずのみば行こう
みずのみでもいい みずのみば行こう
みずのみ行こう みずのみば行こう

ちはやふる
神代も聞かず竜田川 からくれないにみずのみば
月は満月 桜は盛り みずのみばくぐるとは

みずのみでもいい みずのみば行こう
みずのみ行こう みずのみば行こう
みずのみでもいい みずのみば行こう
みずのみ行こう みずのみば行こう

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一緒に書いた詩は「ちはやふる…みずのみばくぐるとは」の部分。他はすべて森田花壇さんによる作詞。「ちはやふる…」の部分は、みずのみば店主である私の個性を表しています。趣味でやっている競技かるた(百人一首)と落語。百人一首には「ちはやふる神代も聞かず竜田川からくれないに水くくるとは」という和歌があります。ちなみに私が競技かるたを始めるきっかけとなったのがアニメ『ちはやふる』。また、古典落語には「ちはやふる」という噺があり、私が初めて覚えた古典落語でもあります。歌詞の「月は満月 桜は盛り」というのは落語の「ちはやふる」に出てくるセリフ。そして「水」を「みずのみば」に置き換えるという森田花壇さんのアイデア。「みずのみばくぐるとは」はみずのみばに行く、みずのみばというお店に入ることを連想させますね。そこからラスサビの「みずのみでもいい みずのみば行こう」。この流れもとても美しい。さらに言うと、元々の「ちはやふる神代も聞かず竜田川からくれないに水くくるとは」という歌は、川一面を紅葉で真っ赤に染め上げた美しい景色のことを詠んだ歌。古典落語ちはやふる」中のセリフ「月は満月 桜は盛り」も、季節や場所は違えど、美しい景色であることを表現しています。みずのみばでの美しい景色、美しい時間を想像させます。

歌詞をあまりにも気に入ってしまったために、蛇足のようなことをつらつらと書いてしまいました。先述したとおり、歌詞の大部分は森田花壇さんが作ってくださったもの。じつは彼と私の付き合いは短いです。今年の初めにお互いのSNSをフォローしあっていて、9月に彼がみずのみばに来てくださり、それが初対面でした。それから片手で数えるほどしか会っていないけれど、みずのみばを好きになってくれて、曲を作ってくださいました。できあがった曲を初めて聴いた時、「みずのみばの解像度めちゃくちゃ高いな!?」と思わず驚いてしまいました。それくらい、みずのみばのことをよく捉えて表現された歌詞だと思うのです。今日改めて彼から、どんなイメージを持ってこの曲を作ったのかを聞かせていただきました。私は「水は根源」であることを考えて、みずのみばという店名をつけたのですが、それがちゃんと伝わっていて嬉しかったです。また彼は「水の周りには人が集まる。川とか海とか。みずのみばという店名を見て、そういう人が集まる場を作ろうとしているのかなと思った」とも話していました。そうそう。私の具体的なイメージは、公園の広場にある噴水でした。みずのみばの中に小さな噴水のオブジェを置こうか一瞬迷ったくらい。みずのみばは実際のお店は民家の中のたった6畳という小さな部屋なんだけれど、私の脳内では、もっと”開かれた”広い空間を想像しています。そんな場でありたいとも思っています。けっして閉じていない。誰もが必要な時に自由に立ち寄れる場。だから理想は年中無休でみずのみばを開けること。現状はなかなか難しいですが、いつかは。

話が少し脱線しました。みずのみばの歌を録音したあと、私がおもむろに(?)カリンバを弾き出して。「カリンバ、良い音ですね。ギターと合わせてみますか」と花壇さん。流れるように再び録音。前奏にカリンバの音が入りました。カリンバの素朴な音色がこの曲に、そしてみずのみばによく合います。

「みずのみば」の歌詞を読んでみずのみば(店)のことを考えていると、「『みずのみば』って、我ながら本当に良い名前を付けたな」と改めて思いました。この曲を通して、私自身みずのみばのことをより好きになれた気がします。森田花壇さん、ありがとうございます。